Y's DIARY

第9話「青い春、夏の屋上にて」

 第9話「青い春、屋上にて」 「これ、青春じゃね?」 季節が緩やかに、しかし確実に夏に向かっていることを感じさせる水無月のある晴れた日。 1年で最も陽が長いこの季節、午後5時を迎えようという時間でも、辺りはまだまだ明るい。 俺とハヤトは、カメラを片手に辺りを見回しながら、やや挙動不審気味にY国立大学のキャンパスを歩いていた。 学生生活に残された時間が少ないことに気付き、女子大生をファインダーに収めよう...

第8話「StrayDogs爆誕」

 第8話「StrayDogs爆誕」 彼は赤い煉瓦の上を走り、どこからかやってきた別の仲間とじゃれ合っては雑草の上を転がっている。 俺に見られていることにも気付いていないのだろうか。それとも気付いていて、その上で無視しているのだろうか。 彼はどこから来たのだろう。首のアクセサリーは、彼に昔は家族がいたことを教えている。しかし、こうして毎日彼を見ていると、それは既に過去の話だということもまたわかる。 彼はもう「...

第7話「イシガキさん」

 第7話「イシガキさん」 イシガキさん、彼女は俺と同じゼミに所属する女性だ。160センチを少し超えるくらいのどちらかと言えば長身に、淡い栗色に染めた髪を肩下まで伸ばしている。アニメやマンガが好きで、ガツガツと自己主張するような性格ではなく、ファッションに無頓着ということはないけれど、それほど容姿に派手さはない。だけど、どこか魅力的な女性。俺が彼女を評するならば、そういうことになるだろう。 俺は彼女と話...

第6話「ビジュアル」

 第6話「ビジュアル」 ダイエー横浜西口店脇の道を北へ進み、一の橋を渡ると、右手に改装工事中のビルが見える。はて、一体ハマボウルはいつになったら新装開店するのかね、などと思いながらその道をさらに進む。すると、左手に見えるビルの1階にファミレス・ジョナサンはある。 そこに、3人の冴えない男たちが集まっていた。 うむ、他でもない俺たち、俺とハヤトとコージローの素人同人ゲーム製作集団(気取り)、である。 ...

第5話「池袋宣言」

 第5話「池袋宣言」「ゲームをつくる?」「そう、この前お前がブログにイラストアップしてんの見て、ビビッと来たんや。お前やったらできる」 俺が描いたイラストを見て、それでゲームをつくろうと思い立って、そしてシナリオを書き始めたというのか? ブログにアップしたのなんて、数日前だぞ? その間に、この作品のアイデアを思い付いて形にしたのか? いや、この作品のアイデアがいつできていたかはあまり問題ではないな...

番外編「今の俺は」

 「同人ゲームができるまで」の連載もまだ序盤も序盤で、いきなり完成したものを見てもらうことになるのもおかしな話だけど、この動画見たら制作当時の自分に胸倉をつかまれたような気分になる……。 まだ1年ちょっと前の話だけど……。 創造性の欠片もない今の仕事で、本当に満足か? 10年前の自分に胸張って会えるか? 今のお前は何か目標持って生きてんのか? しかし考えてみりゃ、大学時代から同じようなことを思い続けて今...

第4話「着火」

 第4話「着火」 何故か変人ばかりが一堂に会したミスタードーナツ2階で、俺とコージローによる「それ」の公開読書が始まった。 「それ」とはつまり、ハヤトが書いたという小説のことである。彼がおもむろにかばんから取り出したA4コピー用紙の束は想像以上に厚く、50枚近くありそうだった。 印刷されていたのは1部のみだったため、俺が1ページ読んだらそれをコージローに渡すというローテーションで読み進めることにした。 タ...

第3話「観念」

 第3話「観念」 爽やかな初夏の陽射しがやや傾き始めた池袋。駅東口からサンシャイン60通りに入り、東急ハンズ手前の小道を南へ少し歩いた先にあるビルの5Fで営業する猫喫茶「299」。 その日、ここには看板猫のどんぐりをはじめとした可愛い猫たち、そして見るからに冴えない男たちがいた。 俺と、コージローと、そしてまさに「招かれざる客」のハヤトである。「ホンマに来たんや」「お前、ホントに来たのかよ……」 電話を受け...

第2話「猫喫茶に集まる3人」

  第2話「猫喫茶に集まる3人」「いい作品て何の話や。そもそも、俺はこれから出掛けるから無理だぞ」 どうやらハヤトは何かしら「読む」ものを書いたらしい。だが、俺にとってはそんなことはどうでもいい。それよりも猫である。寝子である。にゃんこである。 というのも、その日、俺はこれまた大学の悪友もとい数少ない友人の1人であるコージローとともに、池袋の猫喫茶「299」に行く予定だったのだ。 ちなみに、このコージロ...

第1話「始まりはいつも突然に」

  第1話「始まりはいつも突然に」 この世界を支配する因果律という法則。物事にはすべて理由・原因がある。だとすれば、あの1年半に渡る騒々しくも愛すべき日々を生んだのは、あのときの俺の左クリックだったのではないか。 就職活動というものに一応の区切りをつけ、無駄に要領よく単位を積み重ねていた俺が、ほとんど講義も予定もない日々を過ごしていた2008年5月のことである。 別に、その先に大した目標があったわけでは...

予告

 皆様、お久しぶりである。「おいおい、誰もこんな過疎ブログ見てないんだろ」とか「つーか、お前サボりすぎだろ」とかいった瑣末なツッコミは差し控えていただきたい。 本エントリは、「同人ゲームができるまで」連載を予告するものである。 ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、私は2008年5月頃から2009年12月まで同人ゲーム製作を行っていた。それはもう山あり富士山ありの日々で大変だったわけだが、その製作過程をほ...